外来生物法のパブリックコメント提出の意見

最終更新日 2005年5月15日

特定外来生物等の選定について

1意見の対象となる種(資料中のどの生物についての意見か、標準和名で記載してください。)

オオクチバス

2意見の概要(100字以内で記載)

オオクチバスの指定に反対

他の種に対する選定基準と比較してバランスを欠いている。また、拙速な指定は感情的対立を煽り、法の趣旨である被害の防止を妨げる。

3意見及び理由(可能であれば、根拠となる出典等を添付又は併記してください。)

オオクチバスの拙速な指定に反対する。

(1)他の種に対する選定基準と比較してバランスを欠いている

「特定外来生物被害防止基本方針」では、特定外来生物の選定の際の考慮事項として、「特定外来生物の指定に伴う社会的・経済的影響も考慮し、随時選定していくものとする。」としている。

本種は釣り人口も多く、釣り具業界、観光業といった関連産業も含めて大きな経済的価値を有している。釣り具については国際的にも競争力を有するまで発展している。

防除の具体的な方針や目標を定める以前に本種を選定した場合、法律上直ちに釣りができなくなるものではないとしても、将来的な本種の取り扱いに対する憶測や不安を招き、大きな経済的損失をもたらすことが予測される。

また、「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」第2条では、「2 この法律において「生態系等に係る被害」とは、生態系、人の生命若しくは身体又は農林水産業に係る被害をいう。」としている。農林水産業に係る被害とは、特定の農林水産業に対する被害だけではなく、「遊漁」も含めた全体としての被害について、防除した場合としない場合を比較検討されるべきと考える。

さらに、わが国への導入から80年が経過しており、分布の拡大は比較的歴史が浅いことを勘案したとしても、多くの若年層にとっては既に「幼少から周囲に存在した生物」となっている。「特定外来生物被害防止基本方針」では、選定の前提として、「概ね明治元年以降に我が国に導入されたと考えるのが妥当な生物を特定外来生物の選定の対象とする。」としている。しかし、人の生態系に対する感情は自身の実際に経験した生態系によって形成されるものと考えられる。従って、本種の防除は「新たに蔓延したものを取り除く」というより、「最初から存在していたものを取り除く」という受け止め方をせざるを得ない層も存在する。

本種に関するこれらの状況を勘案した場合、他の種の選定との基準の整合性に疑義がある。

たとえば、チュウゴクモクズガニ(上海ガニ)については、「第2回 特定外来生物等分類群専門家グループ会合(無脊椎動物)」資料2で示されているように、欧米で生態系のみならず巣穴による堤防への被害も報告され、米国では食用も含めて輸入禁止になっている。それにも関わらず、「要注意外来生物」としか位置づけられていない。これについては「食用に大量に輸入される上海ガニを、同法で規制するのは困難と判断」したためと報道されている。

また、セイヨウオオマルハナバチについては、「ネット展張等の実施率がまだ高くない状況においては、コストアップ等の要因ともなるネット展張等を義務づけることには理解を得られないおそれも高い。」と、特定外来生物に選定した場合に生じる農林水産業への被害も考慮して選定が先送りされている。

さらに、アメリカザリガニは明治元年以降に我が国に導入されたものであるが、「要注意外来生物」としての選定にとどまっている。「第2回特定外来生物等分類群専門家グループ会合(無脊椎動物)議事概要」によれば、事務局から「シンボリックなものという意味でアメリカザリガニをやると今になって何をやっているだということになる。」との発言があり、明治元年以降であっても分布の拡大の程度や歴史を選定に考慮するとも読みとれる。

これら3種と比較した場合、オオクチバスの選定は生態系に関する被害、農林水産業に関する被害、社会的・経済的影響の考慮の面で同一な基準で判断されたとは言い難い。従って、他の2種と同じ基準で判断するならば、「要注意外来生物」とした上で、将来的な特定外来生物への指定を検討する等の結論が妥当である。

(2)拙速な指定は法の趣旨である被害の防止を妨げる

本種はわが国に移入されて80年が経過しているが、かねてより「内水面漁業への被害」という観点からも規制が求められてきた。

本種の分布拡大に伴って、釣り人の増加や、釣り関係業界の成長がもたらされた一方で、内水面漁業関係者にはその恩恵にあずかることはなかった。また、分布拡大の要因についても釣り関係者による放流、内水面漁業関係者による種苗放流の両方が指摘されており、釣り関係者と内水面漁業関係者の間には深刻な感情的な対立もあると考えられる。

これらの背景もあり、たとえば、水産庁の「外来魚問題に関する懇談会」においても平成15年の中間報告でいわゆる棲み分け案が提起されているが、合意と具体的な活動に結びついていない。

このような経緯のなかで、今回「魚類グループ会合 オオクチバス小グループ会合」において、「指定する前に、指定後の防除のあり方(どの水域について防除に着手するか等)について、予め準備を行うことが本法の円滑な運用と制度適用の実効性を確保するために適切である。」、「学識経験者を中心に、環境省、水産庁、地方公共団体、漁業関係者、釣り関係者等による合同調査委員会の設置を決め、2月初めにも作業方針を決定、調査に着手する。」とされたことは、関係者が完全駆除論、棲み分け論、放置論の原則論ばかりを主張するばかりで、何も具体的な進展がなかったこの問題において大きな進歩であった。

この結果を尊重せずに拙速にオオクチバスを指定しようとすることは、再び関係者の感情的対立を煽るものであり、百害あって一利なしと考える。特に、大臣の一声で方針が転換されたとも報道されていることは、有力者の政治力さえ駆使すれば結論が変えられる、変えられてしまうとの印象を賛成派、反対派双方に与えてしまった面がある。また、仮に今回オオクチバスを特定外来生物に指定したとしても、その後には防除の計画を策定しなければならなければ具体的な防除を実行できない。さらに、本種は第5種共同漁業権対象魚種として合法的に利用されている地域もあり、「防除」とはどこまで駆除を行うのかについて、具体的な整理が必要である。

このような本種の社会的状況を鑑みれば、「魚類グループ会合 オオクチバス小グループ会合」の結論であるように、防除指針を策定した後での指定に向けた検討という案が最も適切と考える。

外来生物法施行規則(案)について

1意見の対象となる箇所(該当箇所がわかるように記載してください。「例:第○○条について」)

第二条について

2意見の概要(100字以内で記載)

第二条に、「十四 第5種共同漁業の免許を受けた者が当該内水面における水産動植物の増殖に伴って飼養等をするものであること。」を追加すべきである。

3意見及び理由(可能であれば、根拠となる出典等を添付又は併記してください。)

漁業法第127条によれば、第5種共同漁業の免許を受けた者は当該内水面で増殖を行わなければならない。第5種共同漁業権の対象には特定外来生物への選定が検討されているものがあり、外来生物法と漁業法の関係を明確化すべき。

外来生物法は第一条で、「この法律は、特定外来生物の飼養、栽培、保管又は運搬(以下「飼養等」という。)、輸入その他の取扱いを規制するとともに、国等による特定外来生物の防除等の措置を講ずることにより、特定外来生物による生態系等に係る被害を防止し、もって生物の多様性の確保、人の生命及び身体の保護並びに農林水産業の健全な発展に寄与することを通じて、国民生活の安定向上に資することを目的とする。」としており、農林水産業の健全な発展を阻害しかねない点は明確化する必要がある。

第5種共同漁業の免許を受けた者による増殖を適用除外として認めても、一般の飼養等は十分に制限されているため、特定外来生物による生態系等に係る被害を防止することは可能である。

このページに関するご要望は高谷 徹(toru@takayas.jp)まで

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